第35回公判(最終弁論)

事件の捜査、公訴それ自体に問題がある国策捜査だ

平成16年8月25日(水)曇一時晴
雲形池
前日の午後東京地裁の広報に確認の電話をすると、35回公判は先着順で夏休み中のため学生が多いと思われるので早めの方がいいとのアドバイス。9時25分頃行くと既に30名の先着者があり、やはり半数は学生風で最終は49名の傍聴希望者だった
朝方にわか雨があったが、昼頃には一時青空ものぞき、暑い一日
定刻10時開廷。まず大室主任弁護人より個々の事件の弁論に先立ち、この事件の捜査・公訴それ自体に問題がある。との主張が約15分に渡ってなされた。
いわく今回の捜査は平成14年頃の世論に応じてなされた国策捜査に他ならない。
やまりん事件は平成10年当時に検察は政治資金規正法違反容疑で捜査したものの立件を見送っている。平成14年当時のマスメディアの過熱報道の中の一連の捜査の中で島田事件が出てきて、同時に立件しなかったやまりん事件をも4年後に事件化している。騒がれていた北方4島問題で宮野明秘書、アフリカODAにからめて佐藤優を逮捕したものの鈴木宗男との関係は立件できなかった。
かように犯罪事実があるから捜査するのではなく、鈴木宗男がいるから捜査したというのが実態で不当な捜査、公訴といわざるを得ない。と述べた。
ヤブラン

その後、「やまりん事件は無罪」との弁論書が関根弁護人から約1時間10分に渡って朗読された。
 受け取った400万円(注1)は官房副長官就任祝い。もし賄賂だとしたら領収書を発行しているのはおかしい。会長の証言は無く、社長の認識で会長の意図が語られたが、息子の社長はもともと鈴木には批判的であり、検察からの脅しに乗ったのがこの結果だ。他の証人の証言にも信憑性が無かったり、自己の利益のためだったりで総て信用できるものではない。

11時25分頃より昼食をはさんで約1時間15分島田建設の受託収賄事件の弁論が若い岩本弁護人からされた。いわく、「島田社長からの請託の事実は無く従って受託の事実も無く、金銭受け取りの事実も無いので無罪」事件の多くの部分に重大なかかわりを持つ大橋証言は信用できない。受領したという600万円の物証はなにもなく、単に社長のポケットマネーと語られたのみだ。島田社長の供述と大橋証言は取り調べ過程で創作された可能性が大きい。受注した工事費の総額に対しては600万円の謝礼は少な過ぎ、単なる小遣い程度に過ぎない。金額からも明らかに現実味に欠ける。
 また、北海道開発庁長官には個々の港湾工事の発注手続きに対する職務権限は無い。
ジャノヒゲ

14時20分より緑川弁護人による議院証言法違反についての弁論が1時間強行われた。起訴事実の3件についていずれも無罪を主張。ここでも企業献金があったかなかったかの質問を、検察官が恣意的に個人献金まで含ませていると批判。そして告発が会期後になされた事は訴訟自体が無効であると主張した。また事前に通知されていた事と異なる質問についての陳述で刑事罰を問われる事は無いとの主張がなされた。

政治資金規正法違反事件に入ったところで、かなり疲労の色が濃かった緑川弁護人から大室弁護人にバトンタッチ。
収支報告書記載違反については被告人の感知しないところで処理されていたもので、被告人との関連は無く、検察官の独断と偏見である。3600万円の件(注2)は佐藤玲子秘書の供述には何等客観的な証拠は無く、政治資金の虚偽記載をさせたことは無い。
以上、今回の件が政治の場での糾弾ならいざ知らず、マスメディアに応じて検察が司法の場で裁こうとする事には被告人は大いに不満であるとの最終弁論が述べられた。

その後15時45分から鈴木宗男被告本人の最終意見陳述がなされた。
 「起訴事実総てにつき無実。」思いと異なる証拠、証言ばかりで、山田勇雄会長、島田光雄社長から直接証言が聞ければ真実を語ってくれた筈だ。島田社長が脳梗塞を発症したのは精神的重圧からで、検察官の責任は大きい。
 連日マスコミから言われ無き攻撃を受けて大騒ぎされた。検察は世論に押されて鈴木の犯罪をあぶりだす努力をしたが結局主題だった北方支援問題、ODAでは何も出てはこなかった。
 佐藤玲子秘書は乳がんの手術をして治療中だったにも拘らず逮捕して取り調べた検察には不信感を抱かざるを得ない。議院証言法違反については野党議員の派生的な質問に対して取り上げたもので検察の偏見に他ならない。
 論告で「反省の情は皆無」と糾弾されたが、至らなさがあったとは自省し、拘置中には写経もしていた。政治不信を招いた事は深くお詫びしなければならない。また逮捕された事については反省している。 今後も政治家として精一杯生きていきたいと思うので、公正な判断がなされる事を切にお願いしたい。

上記で結審し、11月5日午前10時より判決との予定が発表され、16時閉廷。

注1 起訴状では500万円だが、鈴木宗男側は領収書を発行していない100万円は受領していないと、一貫して主張
注2 自宅の購入資金の一部3600万円を政治資金から流用し、収支報告書に記載しなかった件